下有知 ( しもうち ) に伝わる昔話に 『 新助の自慢 』 があります

下有知竜泰寺山の東に 『 おぶと池 』 と呼ばれる用水池があります。

このおぶと池のほとりに、新助という猟師が住んでおりました。

ある冬の朝、新助が早く起きて池を見ると沢山の鴨が泳いでいました。

さっそく鉄砲を持ち出して、ズドーン!とぶっぱなしました。

すると一発で二羽の鴨が撃てました。

「 これはうまいことをした 」 と、池に入り鴨を二羽ひろってもどる途中、足がぬるりとしたので目をこすってよく見てみると、うなぎが何匹も足に巻き付いています。

これもつかまえました。

うなぎを右手に鴨を左手に持って岸まできた時に、足をすべらせたので岸の草につかまると、それがなんと山うさぎの耳でした。

うさぎがびっくりして、足をバタバタさせたら地面が掘れて、土の中から沢山の山芋が出てきました。

新助は “鴨”“うなぎ”“山うさぎ” “山芋” をもって関の町へ行き、これらを売ってから鍛冶屋さんへ行き得意になってこの話をすると、鍛冶屋さんは、

「 今朝、羽(鍬:くわ) と 羽(せんば) を売った 」 と、言いました。

※せんば・・・十能ともいい、炭火を運ぶ道具のこと

そばにきていたお百姓さんは、

「 わしは、羽(豆葉) を取った 」と、言いました。

びっくりして家へ帰る途中、口を手にあてた人がやってきて、

「 今そこで 羽(奥歯) を取った 」と、言いました。

しょんぼりした新助が家の近くまでくると、肩を落としてガックリした様子の人がやってきて、

「 家も屋敷も売り払い、今朝は、ず羽(手水場) を売った 」 と、言いました。

新助は、

「 上には上があるものだ 」 と、感心したそうです。

※手水場・・・便所のことで、手や顔を洗う水のことを『ちょうず』という

「下有知の民話」池村兼武氏 著 より要約

2016年1月21日
下有知ふれあいまちづくり推進委員会
委員長 高橋正次(下有知区長会長)