下有知(しもうち)に伝わる昔話に 『ずっとん和尚』 があります

下有知中学校の校歌にも歌われている唐栗山(からくりやま)の頂上に唐栗神社(からくりじんじゃ)がお祭りしてあります。

そして、その山の東側に黄檗宗(おうばくそう)の松洞院(しょうどういん)というお寺がありました。

このお寺に、良寛さまみたいに子供の大好きな和尚さんが住んでいて、朝のお勤めを済ませた後は一日中子供と遊んでばかりいました。

ある日のこと、和尚さんが裏山に登ってみると狸が一匹じっと和尚さんを眺めています。

その顔がいかにも可愛かったので 「おう、おまえも一人ぼっちで淋しいか、お寺へおいで」 と声をかけると、狸は和尚さんについてお寺までやってきました。

「狸や、よう来たな。お供えのお餅をやるで食べな」 と言ってやりますと、喜んでそれを食べ、それからは夜でも遊びに来るようになり、和尚さんとすっかり仲良しになりました。

ある晩のこと、和尚さんが目を覚ますと、ズットン、ズットンと音がします。

何だろうと思って見に行って見ると、雨戸の節穴から狸のしっぽが出たり入ったりして、そのたびにズットン、ズットンと音がします。

しばらく黙って見ていましたが、いつまでたっても止めないのでしっぽが節穴からぐっと出た時に力いっぱい引っ張りました。

「キャンキャン」

びっくりした狸は逃げて行き、それからはもう遊びに来なくなりました。

それからは子供達は和尚さんのことを 『ずっとん和尚』 と呼ぶようになり、子どもと和尚さんはこの狸遊びをするようになりました。

狸遊びのやり方は、狸役になった子は帯をぞろ~んと下げ、壁の穴などに差し込みます。

それを和尚さん役になった子が不意に引っ張ると、狸役になった子はキャンキャンと大声をあげて逃げるのです。

この遊びは大正時代まで続いたとの事です。

「下有知の民話」池村兼武氏 著 より要約

2015年12月28日
下有知ふれあいのまちづくり推進委員会
委員長 高橋正次(下有知区長会長)