下有知(しもうち)に伝わる昔話に 『狼の聞き分け』 があります
丸の中に四角い穴のあいた 「寛永通宝」 が通用するより前のお話です。(江戸時代より前となります)
唐栗山のふもとに末次郎というお百姓が住んでいました。
秋の取り入れも終わり 「寒い冬が来てもええな。来年までは・・・」 と言いながら、ふと薪小屋を見ると薪が少ししかありません。
「こりゃいかん。これでは冬が越せん」 と言い、翌日は朝早くから背板を背負い、鎌や鉈を持って薪を切りに出かけました。
下有知中学校の校歌に歌われる唐栗山、ここに下有知中学校のマスコットキャラクター「からちゃん」が住んでいます
山へ着いても一服もせず仕事にかかったので、神光寺の鐘がゴ~ンとお昼を告げた時には、他の者なら一日分になる程の薪を切り出していました。
昼弁当を食べながら、ふと前を見ると可愛い子犬がしっぽを振っています。
「こっちへおいで」 と抱き寄せ、頭をなでてやり弁当を分けて食べさせました。
弁当が終わり午後の仕事に取り掛かっても、子犬はその辺りをころころ歩き回っており、やがて日暮れ時になりました。
子犬をこんな山に残しておくのは可愛そうだと思い、子犬をふところに入れて家に帰りました。
家の人達は珍しがって、箱に藁を敷いて寝床を作ってやり、どんぶりにご飯を入れ味噌汁をかけて食べさせました。
真夜中のこと、バリバリ、ドンドンドンと戸をたたく音がしました。
初めは風の音かと思いましたが段々と音が大きくなり、ウォ~という唸り声まで聞こえたので、びっくりして戸を開けてみると大きな狼が二匹いました。
唐栗山山頂にある唐栗神社
末次郎さんはそこに座り、人にお詫びをするように手をついて 「今日の子犬はお前たちの子じゃったのか。わしは知らんもんで拾って来てしまったが、まことにすまんことをした」
「今夜は暗いで、明日はちゃんと連れてって元の所に返すで、帰ってもらえんじゃろか」 と丁寧に言いました。
すると、二匹の狼は大きくふた声吠えて帰って行きました。
末次郎さんは、「ああ、狼とゆうものは、何と聞き分けの良いものだ」 と感心したそうです。
「下有知の民話」池村兼武氏 著 より要約
2015年12月29日
下有知ふれあいのまちづくり推進委員会
委員長 高橋正次(下有知区長会長)